『老婦人と鳩』シルヴァン・ショメ / フランス / 1998
The Old Lady And The Pigeons (Sylvain Chomet)
『べルヴィル・ランデブー』や『イリュージョニスト』などの長編アニメーションで有名なシルヴァン・ショメ監督の処女作です。
最近では『ぼくを探して』という実写映画も撮っていましたね。
さて、これは22分の短編です。
もはやホラーです。
ホラーを通り越してコメディです。
セピア調のノスタルジックな色合い、バンドネオンの哀愁漂う音色、
ホラーからもコメディからも程遠いムードの中で、淡々と時は迫って行きます。
Xデー 、いや、X’masに。
時間経過の描写や、それを切り取るカメラワークが面白い。
台詞がなくても、動きや仕草など細部にこだわった演出が十分物語や関係性を描き出しているので、
まったくわかります。
皮肉っぽいところや、変に素直なところがあり、
見るからに気難しそうな口ひげを携えた貧しい老人が横柄だったり、
ヒョコヒョコ動く裕福な可愛らしい老婆が残忍であったり、
偽善で描かれないのがフランスらしい。
でも、老人が鳩を殴る時「ポコ」と可愛らしい音と動きで、本気で殴っていない”遠慮”を感じたので
その時、「あ、この人横柄だけど悪い人じゃないかも!」と思いました。
処女作なので、若干の絵のタッチの違いはあれど、
背景描写の緻密な描き込みはすでにこの頃から健在、ブラックユーモアに満ちたショメ節はどの作品よりも強いかも。
アヌシーや広島、イギリスなどの各国のアニメーションフェスティバルで受賞。
アカデミー賞短編アニメーション部門にもノミネートされました。