『ピカドン』 木下蓮三

『ピカドン』  木下蓮三/ 日本 /  1978年

pikadon (Renzou Kinoshita)

 

1945年8月6日の広島の出来事を描いた作品です。

ピカドンとは、そう、原爆のこと。

戦時中、質素な生活ながらも、お互いを思いやり、人と人とが支えあい、お国のために懸命に生きていた広島の人々に突如訪れた、ピカドン。

一瞬にしてすべてを破壊し、多くを奪い、過ぎ去っていきました。

丁寧に描かれる人々の日常と、美しく儚いピアノの旋律が、

のちに訪れる悲劇をさらに悲しく恐ろしいものとして描き出しています。

 

戻ることも着地することもできなかった、坊やが飛ばした紙飛行機は、広島の人々の思いとともに、今でも広島の空中を飛び続けています。

 

忘れてはならない、忘れるわけにはいかない、だから、見続けなければいけない。

 

今日は終戦記念日ということで。

『幽霊船』大藤信郎

『幽霊船』大藤信郎/日本/1956

美しい光のレイヤーの中、優雅に蠢くシルエット。

濃い影、薄い影、濃い色、淡い色

本当に影絵なのかと疑いたくなるほど繊細で滑らかな動きや造形の連続に
思わず目が離せなくなります。

エキゾチックな音楽と歌詞のないコーラスが美しさと恐ろしさを増長し、
明度の高い色鮮やかな映像にもかかわらず、終始不気味な雰囲気が漂います。

白昼夢や蜃気楼のような、
まるで真昼に悪夢を見ているよう。

オープニングがメイキングになっているのがユニークですね。

『桃太郎 海の神兵』瀬尾光世


「桃太郎 海の神兵」瀬尾光世/日本/1945

 

タイトルと時代から察する通り、戦意高揚映画なのだけれども、

とても興味深い作品。

主人公は昔話のヒーローである桃太郎です。

桃太郎は日本画の中に描かれる天草四郎のように、凛々しく丹精な顔立ちをしています。

しかし、桃太郎以外はみんな動物なんです。

動物たちは、のらくろや、フクちゃんのような、キャラクター化された可愛らしい描かれ方をしていますが、

アップになると、時折桃太郎のような凛々しい顔立ちになることがあり、その違和感や表情にドキッとする。(あの顔は、キメ顔なのかしら?)

また、全編通して風を感じることができるのが特徴的で、

セーラー服の襟が、桃太郎の前髪が、国旗がふわっとなびき、

常に心地の良い風が吹き抜けていきます。

 

個人的に好きなシーンは、中盤の「アイウエオ」の唄のくだり。

侵略した土地で現地の人に日本語を教える、という、

今思うと不謹慎なシーンだけれど、

ほとんど「ア・イ・ウ・エ・オ」の5文字だけで進むこののシーンは

戦意高揚映画とは思えないほどおおらかで、のどかで、平和に見えます。

しかし、心で楽しいと思っても、頭のどこかで道徳的にせつないと考えてしまうシーンです。

 

今朝、

「桃太郎 海の神兵」がカンヌで上映されたという記事を見て、

久々に見たくなったので、

実はコレ、短編じゃないんですが、是非。